もしも

日本児童文芸協会の月刊誌、児童文芸に掲載された「もしも」の原稿を掲載します。

毎日の様に、一人子の幼い息子は、よくお友達を連れて来ました。
私は、遊ぶ子供達をモデルに、即興の物語を話しかけながら、大急ぎでパステルを走らせ、描いていました。
ごほうびは、星のかけらの様な形の果実酒を作る氷砂糖です。
「並んだ子供に星の妖精からの飴」と話し口に入れてあげました。
「おばさんね、おしりに凄く小さなしっぽがあってね、夜空を飛べるの。」
「でも、もしもだれかがこの事を知ると、魔法は消えて、お星様の飴は、無くなるのよ。」
こうして、子供達と小さな秘密の約束を交わす頃には陽は傾きだすのでした。
そうして一人の男の子は、台所にいる私のおしりを、不思議そうにじっと見つめながら、「さようなら、またね。」と帰っていきました。
一年生の家庭訪問では、「おかあさん、魔女ですってね!」先生の笑顔とはじける声が、緊張して待っていた私の心に光と風となって爽やかにとおり抜けてゆきました。